The link at the date of the calendar is an entry.
スポンサーサイト
-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告
魔王への道(仮) 序章『ここはどこだ!? 魔界だ!!』
2011-08-19 Fri 22:40
先日三月末に完成した作品の結果が出たため、せっかくなので公開してみる事に。
一度に公開するには長いので、一日ごとに分割して公開していくので興味のある方はご覧になってください。あと、どういうところが面白かったとか、ここがつまんねーなどなど感想とか一言いただけたりするとすごく喜びます。

作品簡易紹介
『魔王』
特撮ヒーロー番組の悪役マニア、自称「どこにでもいる普通の学生」。
突然魔界に呼び出されて唖然とするものの、わりとすぐに順応する。


『魔道士』
RPGなどでよく見るローブ姿でフードを目深にかぶった、見るからに魔道士っぽい人物。
魔王を魔界に召喚し、勝手に魔王と任命した騒動の張本人。


この作品を作るときにイメージしたテーマは「勢いとノリ」「王道一直線」です。


作品の個人的反省点
一、締め切りの都合上制作時間が短すぎた事
二、そのため昔書いた物を改稿したので若干ネタが古い事
三、投稿作品のくせに続編前提の書き方をした事
四、なにも深く考えずにとにかく勢いで書いた事
五、そもそもラノベを書いたのが6年ぶりくらいだったので書き方を再勉強する必要があった事

~序章『ここはどこだ!? 魔界だ!!』~

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 鬱蒼と草の生い茂る薄気味悪い森の中で、絶叫に近い俺の叫び声が木霊する。

「ぎゃああああああああっ!」

 腰の辺りまで伸びた草をかき分け、うねうねと蠢く謎の木々を縫うように避けつつ、俺は後ろを振り返る余裕すらないまま全力全開の悲鳴を上げて駆け抜けていた。
 ただでさえ慣れない土地、おまけに走りづらく視界も悪いこの状況下にもかかわらず、俺は必死で走った。
 走らなければならなかった。

「何だ、何だよ、今度は一体何なんだ!?」

 俺は力いっぱいの罵倒と共に足を動かす。
 動かさざるを得ない。
 無駄に鋭い草で腕を切ろうと、地面に蔓延る蔓に足を取られようと、俺は叫び続けた。
なぜなら……

「ブモォォォォォォォォッ!」

 背後から低い地響きを上げた謎の凶悪生物。
 その謎の凶悪生物(見た目は豚だ。ただしサイズは比較にならないほど巨大で、額には岩をも貫きそうな鋭利な一本角、おまけに鉤爪だって下手な刃物よりも鋭そうだ)は、象ほどもあるその巨体にもかかわらず、木々をなぎ倒して爆走する。
 それは俺の全力全開と全く同じくらいの速度で、明らかに俺を標的にして迫ってきている。

「ブモォォォォォォォォッ!」
「悪かったって! 別にお前に危害を加えるつもりはないんだって!!」

 夕飯の獲物を探して森の中を彷徨っていたら、たまたまコイツの尻尾を踏んづけてしまっただけだ。
 あんだけでかい図体しているくせに、尻尾の先をちょっと踏んづけてしまっただけでこれだぜ? ちょっと神経過敏とか思わないか?
 俺は思うね!

「話せばわかる! 俺達には対話することで無益な争いを回避する事だってできるだろ!?」
「ブモォォォォォォォォッ!」
「ええい、通じるとか期待してなかったよこの畜生め!」

 俺は必死に悪態をつきながらもやっぱり走る。
 だって走らないとマジ轢き殺されるぞ!

「くそ、何がこの辺の生き物は比較的大人しいだ、メチャクチャ獰猛じゃねえか!」

 そして今度は情報の提供者である旅仲間に悪態をつく。
 きっと今頃、退屈そうに欠伸の一つでもしているに違いない。

「あんにゃろう、絶対わかってやりやがったな! つーか意図的に騙しやがったな!?」

 大声を上げての全力疾走。こんな無茶をしているおかげで、すでに俺の心臓は破裂寸前だ。
 ありえねえ。
 何もかもがありえないこの場所で、もはや一般常識は通用しない。
 俺は生き延びるために、俺自身の限界すら超えつつあった。そう、ある意味世界という枠から解き放たれた俺は、人という殻を脱ぎ捨てて今羽ばたこうとしていた……

「って、ねえから! トリプってる暇じゃねえから、俺!!」
「ブモォォォォォォォォッ!」
「うっせーよ、このデカブツ! つーか、なんで魔界(ここ)にはこんな凶悪な生き物しかいないんだよ!?」

 何を隠そうここは魔界だ。
 おまけに今いる場所は、一度入り込んだら二度と陽の目を見ることの出来なさそうな不気味な樹海。耳を澄ませば明らかに奇妙で珍妙な動植物の声まで聞こえそうだ。
 もちろんそんな余裕は一切無いけどな!
 とにかく、どういう訳か生まれも育ちも生粋な日本人で人間なはずの俺は、なぜかそんなトンデモ世界で旅をしていた。いや、せざるを得なかった。
 なぜかって?
 んなもん俺が聞きたいくらいだ。
 だいたい事の始まりだってろくなモンじゃねえ。
 そう、あの日まで俺は普通の学生だった。
 そりゃちょっと両親がいなくて、週七で三つほどバイトをかけ持ちしている、そんなどこにでも居る一般的な学生だったんだから……



 ニ〇一X年 T都N区某所

ジリリリリリリリリッッッ!!

 朝の穏やかな静けさの中、一般家庭なら平日にしか鳴り響くことのないけたたましい音が盛大に鳴り響く。
 誰だって休日の朝くらいゆっくりしたいものだろう。
 俺だってこんな時くらい仕事を言い渡されてもさすがに御免被りたいところだ。

ジリリリリリリ『ガンッ!』……

「うる……さい……」

 だが、週休一日というブラックな我が家でも律儀にも仕事をこなしてくれる目覚まし時計に、感謝の意もあったもんじゃないガツンと強烈な一撃を叩きつけて俺は目を覚ます。
 俺なら間違い無くその一発でブチ切れ一触即発喧嘩上等の事態までもつれ込むだろう。

「ふあ、もう……朝か」

 ああ、昨晩もバイトで遅かったからもうちょっと寝たい。出来れば一日中だって眠っていたいと思うところだ。
 だって日曜日だよ? 世間で言えば休日だよ?
 寝る以外の選択肢とかありえない。
 だが時の流れとは無情なもので時刻はまもなく七時半、早くしないと始まってしまう。
 刻一刻と迫り来るカウントダウンを前に、俺は名残惜しみながらも居心地の良い布団の中から芋虫のように這い出でた。

「リモコン……リモコンっと」

 前もって枕元に置いていたリモコンを使ってテレビをつける。
 ずいぶんと型の古いブラウン管テレビはゆっくりと画面を映しだし、そこから流れるのはおなじみのCM、おなじみのフレーズ。俺が楽しみにしている番組の前に必ず放送されるCMを前に、俺の期待は高まり眠気だって一瞬で吹き飛んだ。
 そう、俺が週に一度の至福の時間である『特撮戦隊ヒーロー番組』の日。
 特に今やっている『天界戦隊テンシマン』という、地球侵略を企む魔界の軍勢『イビルヴェイジョン』を、天界から来た五人の戦士達が阻止するという物語なのだが。どういうわけか毎回イケメンの主人公達がヒーローとは思えぬ姑息な手段を使い、魔界の怪人を罠にハメてから寄って集って袋叩きにして倒していくという今までにない展開を繰り広げる内容であり、俺的歴代嫌いなヒーローランキングのトップ(ヒーローが嫌いなだけであって、番組自体の評価はそこまで悪くない)を飾るほどの番組だ。

「先週はすげーいいトコで終わっちまったからな、ずっと楽しみにしてたんだよな」

 前回、魔界軍『イビルヴェイジョン』の王を打ち倒したテンシマンがついに魔界の半分以上を制圧。
 魔界の隅まで追いやられていた魔界軍『イビルヴェイジョン』が最終手段を用いてついに反撃を始めようという、とてもとても気になるところで終りを迎えてしまった。
 そのため特撮の戦隊ヒーローマニアの俺としては最終手段とやらがどんなものか。
 そして、その結果どういう展開が待ち受けているのだろうかが気になって、この一週間何も手につかなかったほどの見逃せない回なのであった。

「くぅ、長かったぜこの一週間!」

 これのおかげで、何度バイト先でミスをやらかしちまったことか……

「だがそんな事もこれで終わりだ。さて、一体どんな展開を見せてくれるん……あれ?」

 爆発寸前の興奮とワクワク感をなんとか抑えつつ、CMが終わるのを待つ……が。
 さあテンシマンが始まるぞという、まさにその瞬間を狙っていたかのようにテレビの画面に砂嵐のようなノイズが走り出す。
 先程まで鮮明に映し出されていたはずの画面は、わずかに輪郭を映すようにノイズに包まれ、ザーという雑音ばかりが静かな部屋に虚しく響いた。

「って、おい! まさかこんなときに故障かよ?」

 俺はテレビに駆け寄り、バシバシと右斜め上から軽く数回テレビを叩いた。

「冗談じゃない、今日という日をどれだけ楽しみにしてたと思うんだ!?」

 バシバシ、ガンガン、ドカドカ!

 古いブラウン管テレビにありがちな故障を直す秘伝の技『ロシア式』スタイル。
 いつもならこれで直るはずなのだが、なぜか今日に限っては逆に事態を悪化させるように画面は完全にノイズまみれの砂嵐だ。

「頼む、ついてくれ! つくんだテレビィィィィィッ!!」

 テレビ局のほうに問題があるのか、テレビ自体に異常があるのかを確かめるべく俺は適当にチャンネルを変えてみた。

「いかん、完全にテレビが逝っちまってる」

 俺は有名なAA(アスキーアート)のように、跪き両手を床について絶望した。
 リモコンだろうが、テレビ本体から手動でボタンを押そうがまったく反応を示さず。それどころか電源を押してもテレビの画面は消えることなく、その砂嵐と耳障りな雑音を映し続けた。

「おいおい、どうなっているんだよ? というかなぜこのタイミングで……」

 すでに諦めモードの俺は、近いうちにクラスの『特撮ヒーロー研究同好会』のメンバーである友人に録画した奴を見せてもらうことにして……
 いや、そんなことよりも来週からもどうしたものか。

「ったく、テレビを買う余裕なんてないぞ?」

 元々一人暮らしを始めた際に、近所の粗大ごみ置き場で偶然見つけたこのテレビ。拾ってきた当時から危うかったコイツをだましだまし使い続けて一年間、ついにこの時を迎えてしまったか。

「しかたない、またどっかから探してくるかね」

 出来れば地デジ対応のとかどっかに落ちてないものだろうか。
 さすがにこんな故障は今までになかったので困り果てた俺は、とりあえず壊れたテレビに向かって視線を向けたときだった。

『……より………へ………まえ…』
「……へ?」

 それは確かに雑音の中にかすかに混じる人の声。
 先ほどまで砂嵐しか映っていなかったテレビの画面に、わずかながら人の輪郭が映り始める。

「……おお、これはまさか!?」

 俺の思いが届いたのか?
 まさかこんな俺を見て哀れに思った神様が奇跡を与えてくれたのか!?

『我が……により、………を召喚……まえ』

 俺はテレビが直り始めたのかと思い、その画面を覗き込んだ瞬間。テレビが強烈な光を放ったかと思えば、次の瞬間には突然の浮遊感が俺を襲った。
 え、何が起きちゃってるの?
 この状況はいったい全体なんなんだ!?

「まさか、これはあのゲームやら漫画でよくあるあれか!?」

 光に包まれた主人公が、次に目を覚ましたら異世界に飛ばされていたりなんちゃったりして、そこから始まる愛とか勇気とか友情とかが溢れる、そんな大冒険が始まったりしそうなあれか!?
 って待てよ、それじゃ俺は世界を救うヒーローになってしまうんじゃないか?
 それはまずい! 俺は正義のヒーローになりたいんじゃない、悪の秘密結社の幹部がいいんだ!

「タイム! ちょっとタイム!」

 ヒーローだなんて真っ平ゴメンだぞ?
 そんなものになるくらいなら異世界になんか行きたくないぞ?

「くそ、光よ治まれ!」

 目も開けられぬ閃光の中で必死にもがくが、徐々に意識が奪い取られるような感覚に襲われる。
 ダメだ……意識が。
 瞑った瞼の隙間から入り込む光が徐々に闇に堕ちていく。
 それはおそらく光が止んだのではなく、俺の意識が深い闇に引き込まれていっているのだろう……



 最初に感じたものは冷たい石畳のような感触。
 凹凸の少ない均等に整地されたそれは、なんとなくだが人工物であろうと分かった。

「んっ……」

 頬に当たる水滴が徐々に俺の意識を呼び起こす。
 どれほどの間、気を失っていたのだろうか?
 自分の体の動かそうとすると、節々に鈍い痛みと共に感覚が戻る。
 ゆっくりと開く瞼の先に、ぼんやりと視界に入る小さな明かりが数個。湿った空気と鼻を刺す僅かなかび臭さに顔をしかめた。

「よっと……いつっ」

 やっとのことで体を起こした俺は、ズキリと痛む頭を軽く押さえる。
 薄暗すぎるこの場所のせいか、まだ視界のはっきりしない目を擦った。

「ここは……どこだ?」

 辺りを見回してみれば、そこは不気味なくらい静かで薄暗く広い空間というのが分かった。
 天井や壁は人の手が一切加わっていないゴツゴツとした岩に覆われているところから、どうやらここは洞穴の中ではないかと予想する。

「参ったな、全く事態が把握できないぞ」

 さながらRPGのダンジョンとでも言ったところか?
 陽の光すら入らない程奥深くにある場所なのか、壁に取り付けられたいくつかの松明が申し訳程度に薄く辺りを照らしていた。

「困ったな、どうしたものか」

 さて、この状況を目の当たりにして、どういうわけかこれほどの異常事態にもかかわらず、割と冷静でいる自分がいた。
 やはり普段から悪の秘密結社の幹部になりたいだのと、同じ趣味の友人と妄想にふけっていたおかげで他の人より心構えというやつが出来ていたのだろうか?
 はたまた混乱しすぎのあまり一周して、冷静になっただけなのか?

「っと、そんなことよりもこの状況をどうするかが先決か」

 何か手がかりがないかと辺りを見回してみると、以外とすぐ近くにヒントになりそうなものが目に入る。俺のすぐ近く、瓦礫の山の隅に真っ黒い布切れが山のような形を作っていた。

「おーい、ちょっと尋ねたいんだが」

 俺はその布切れの山。真っ黒のローブを纏い、そこに倒れていた人物に声をかけてみた。

「…………」   
  
 ……が、残念なことに反応がない。
 『返事がない、ただの屍のようだ』とか一瞬頭に浮かんだが、洒落になっていないのですぐに頭の隅に追いやった。

「おいアンタ、大丈夫か?」
「う……ん」
「よかった、一応生きているっぽいな」

 どうやらちゃんと息もしているようなので、ただ単に気を失っているだけなんだろう。
 というか、どうしてこんなところで気を失っているんだ?
 俺は倒れている人物を改めて観察してみて思ったが、フードを目深に被っているせいで口元しか見えないが、その服装はどっからどうみてもアレだ。
 そう、漫画やゲームによく出てくる魔道士そのものだ。
 おまけに手元には、細長い木の棒の先端に宝石のような物が取り付けられた杖も落ちている、多分コイツの所有物だろう。

「よし、せっかくだから俺はコイツを『謎の魔道士』と呼ぶぜ!」

 ……いや、待てよ? 『謎の魔道士』じゃ長いから『魔道士』でいいか?
 確かに考えてみれば見るからに謎っぽい相手に、わざわざ『謎の』なんてつけるのもなんかおかしいな。
 よし、やっぱり『魔道士』と呼ぼう。在り来りだがシンプルでわかりやすいし。

「う、ん……はっ!」

 俺がそんなどうでもいいことを考えている間に、どうやら魔道士が目を覚ましたようだ。

「よう、目が覚めたか?」
「ん、お前は……」

 中性的で声色の高い少年期半ばと思える声、身長もさして大きくないところから見て、本当にまだ年端もいかない子供のようなイメージだった。どうやら俺とは片手分くらいは歳が離れていると考えて間違いなさそうだ。
 しかし、この魔道士はどういうわけか俺のほうを見ながら固まっている。
 開きっぱなしの口から時折震えた声が聞こえるが、あいにくだが小さすぎて聞き取れない。
 というか驚いているように見えるが……まあいい、とにかく状況を把握しないことにはどうしようもないし、この魔道士なら何か知っているだろう。

「すまないがそこの魔道士よ。ちょっとばかりお前に聞きたいことが―――」
「えーと、お前は誰だ?」
「……はい?」

 思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
 魔道士は俺の顔を見て不思議そうに首をかしげているところを見ると、どうやら俺がここにいること自体場違いのような気がしてきた。
 え? っていうか何この流れ?
 流れからして、どう見てもこの魔道士が何らかの儀式で俺を呼び出したんじゃないのか?
 だってよく見れば、俺がさっき倒れてた場所に凄い魔方陣みたいなのがあるんだぜ?
 あれで俺を呼んだんだろ? なあ、そうなんだろ?
 はっ、まさか何かしら別のことをしようとして、間違えて俺が呼び出されたとかそういうオチか!
 クソ、なんてこった! こちとら楽しみにしていたテンシマンさえ見れなかったというのに、何だこのオチは!

「おい、どういうことだよ!」

 俺は、立ち上がると俺より頭一つ分小さな魔道士を睨みつけた。

「ん、なんだ?」
「え、いや……そのだな」

 ギン、とローブの奥から覗く深く光る紅い瞳に思わず震え上がる。
 やっべ、なにこれ目が光ってますよ?
 マジ怖ぇ……コイツただの人間じゃねえぞ。これは下手に刺激しないで穏便に話を聞こうじゃないか。
 うん、それがいい。だってコイツ只者じゃないぞ、マジで?
 とにかく怒らせない様に、さりとて下手過ぎて舐められないように、平然を装って対応していこう。うん、それが一番だ。
 ああ、自分で言っててなんだか悲しくなってきたぞ。
 最初の勢いはどこへやら、俺超情けねえ……

「お前が俺を呼び出したんじゃないのか?」
「うむ、その筈なんだがおかしいな。お前、人間だろ?」
「そりゃまあどこをどう見ても人間だが……」
「ボクが呼び出したのは別の異次元の魔王。決して人間など召喚しようとしてないんだが」
「……はい?」

 魔王?
 魔王というのは古来より世界を征服するために魔族を率いたり、それを阻止すべく立ち上がった勇者と激戦を繰り広げるというあの魔王ですか?
 そんなものを呼び出してどうするんだよというツッコミの前に、どうしてそんな存在と間違えられて俺が呼び出されたのかさっぱり理解できないのですが?

「おかしいな、魔方陣も儀式に使う道具も、月の位置も時間も詠唱も完璧だったはずなのに……なぜ失敗してしまったんだ」
「ちょっと待ってくれ、魔王ってなんだよ? いや、それより一体ここはどこなんだ? というかなんで俺はここで倒れていたんだ?」
「ええい、一度にまとめて質問するな!」
「ああ、すまん。つい……」
「ふん、まあいい。魔王とは名のとおり魔界を統べる王のことだ、そんな事も分からんのか?」

 そんな常識も知らないのかと言った感じで、魔道士は鼻を鳴らす。
 いや、それは知っているけどね?
 知っているんだけど……

「魔界……ここが魔界っていうのか?」
「ああ、そうだ。ここは魔界の北に位置するインフェル地方だ。ボクは訳あってここで魔王を召喚する儀式を行ったはずなんだが……」
「はずなんだが?」
「どういう訳か間違ってお前が呼び出されたみたいだな。スマン、許せ」

 悪びれもなくサラッと片手を上げて謝罪の言葉で済ませる魔道士。
 え? 何この軽いノリ?

「軽いなオイ! そこ軽く流していいところじゃないだろ!?」
「仕方ないだろ、ボクにも理由がわからないんだから!」
「おいおい……じゃあ俺はどうなるんだ? もしかしてずっとこのままとか言うんじゃないんだろうな?」
「……ふむ」
「どうなんだ、ちゃんと帰る手段はあるんだろうな?」
「そうだな……そもそも『究極大召喚(オーバー・リミット・サモン)』で人間が呼び出されたという前例なんてないのに、どういうことだ?」

 誤魔化してる? この子もしかして誤魔化してるの!?
 だってこの子、妙に視線逸らして考えてる振りを始めたよ? 絶対誤魔化してるよね!?

「……まさかお前、戻す方法を知らないんじゃないだろうな?」
「冗談だ、冗談。そこまで心配せんでもよい」
「なんだ脅かすなよ……」

 魔道士の言葉でホッと安堵の息を漏らす。
 だよな、これで『戻せなくなっちゃいました、ごめんね(笑)』とか、いかにも漫画やゲームみたいな展開が早々起きるわけがないよな。
 いや、もうすでに漫画やゲームの範疇の超展開に巻き込まれてるけどさ。
 だが、安心する俺とは対照的に魔道士は一人でぶつぶつとなにやら考え込んでいた。

「しかしそうなると困ったな、どうしたものか」
「なんだ、もしかして問題でもあるのか?」
「うむ、お前がここにいる理由は間違い無くボクの『究極大召喚』によって呼び出されたものと見て間違いないだろう」
「ああ、そう言えばそんな事言ってたな」

 先程の魔道士の言葉を思い出す。
 確か魔方陣だの儀式に使う道具だの、おいそれと行うことの出来ないものなんだろう。
 しかし、なんでそんな大それたモノで俺が呼び出されちまったのかホント不思議だ。

「そもそも『召喚』というものは召喚者(サモナー)の願いを叶えるために、その願いを叶えることができる存在を呼び出す魔法なんだ。例えば『炎を使いたい』と願えば召喚されるものは『炎属性を持った存在が呼び出される』といった感じでな」
「ふむ、なるほど。そいつは便利なもんだな」
「うむ、だが便利とは言っても万能ではない。『召喚』とは何でもかんでも呼び出すことが出来る訳じゃないからな」
「確かに自分が望むままに、なんでもかんでも呼び出すことが出来ればそりゃチートだからな。なんか条件とかがあるのか?」

 際限なしに呼び出しちまえばそれこそ無敵だ。敵よりも強い存在を呼び出して戦えばそれで済んでしまうからな。

「そこなんだが、呼び出すことが出来る対象は二種類ある。一つは『召喚者よりも魔力が低い存在』、そしてもう一つは『召喚者の願いに同意して自ら召喚に応える存在』だ。このどちらかが存在しなければ『召喚』が成功することは決してない」
「ん、そうなると俺はどうして呼ばれたんだ? まさかお前の願いを俺が叶えることが出来るとでも言うのか?」
「そんな訳あるまい。先程も言ったが、ボクが呼びだそうとしたのは異次元の魔王。正確には『魔界を一つに出来る、魔王の資格を持つ者』だ。それがお前にあるとでも言うのか?」
「あー、そりゃ無理だな」

 そんなの言われるまでもなく不可能だ。
 そこら辺を探せばすぐ見つかりそうな、どこにでも居るような一般学生の俺が魔界を一つにする?
 冗談だとしても笑えなすぎるだろ。
 漫画とかゲームならここで、実は俺の中に流れる勇者の血がどうとか語られるところだが、あいにく俺の両親だって一般人だ。それに加えて、子供の頃にかめ○め波の練習をしたけど無理だったくらいだぞ。

「でもそれならお前が魔王になればいいんじゃないのか? 異次元の魔王を呼びだそうとするほど魔力とやらに自信があるんだろ?」
「いや、ボクは確かに普通の魔族よりは魔力が高いが、それでも平均的に見て一回りか二回りほど上回っている程度なんだ。魔界を統べるほどの圧倒的な魔力はないし、それを補うために『究極大召喚』で一時的にだが大幅に魔力を高めたんだ」

 なるほど俺が倒れていたところにあった魔方陣や、よく見ればそこら辺に転がっている瓦礫の山と思っていたガラクタの数々なんかはそれで使ったものなのか。

「まさかここまで完璧な儀式をして失敗するとは……」
「大変だなお前も、せっかく準備したのにこれじゃあさすがに落ち込むだろう」
「落ち込んで済むものか! 魔王召喚ほどの大儀式の準備だぞ? 仮に道具が揃っても次にチャンスが来るのは軽く数千年後だ……それじゃ遅いんだ」

 魔道士は震える声を噛み締めるように呟いた。
 そういえば月や時間がどうとか言ってたし、タイミング的な要素も色々必要な大事だったんだろう。それを失敗しちまったとなれば掛ける言葉も見つからない。
 それにしても数千年先か、よほど魔王とやらが必要なんだろうな。
 ……ん、ということはちょっと待てよ?

「じゃあさ、願いが叶わなかった場合ってどうなんの?」
「う……それは」

 魔道士の声がくぐもる。
 先程まで不気味に紅く光っていた瞳は、所在なさ気に明後日の方向へ行ったり来たり……って、まさか!?

「ちょっとまて、まさか俺はお前の願いが叶うまで魔界にいる事になるとか言うなよ?」

 話を聞けば『召喚』は召喚者の願いを叶えるための物だろ? じゃあ願いが叶えられないままだとどうなるんだ?

「う、うむ……悪いがそうなるな」

 魔道士はゆっくりと首を縦に振った。

「は、ははっ……それじゃあなにか? 俺はお前の願いが叶うまでこのまま帰ることが出来なくて、次に同じ規模の儀式が出来るのは早くて数千年先と?」
「……そうなるな」

 終わった……俺の人生はたった今音を立てて崩れ去った。
 思えば物心ついた時から母親が不在だったし。そんな俺を男手ひとつで育ててくれた親父を事故で失い、引きとってくれた爺ちゃんも昨年中学を卒業すると同時に看取り、ついには天涯孤独となっちまった俺。
 そんな俺の最後が、誰も知り合いのいない魔界で孤独な終わりを迎えるのか……なんだったんだろうな、俺の人生って?
 はは、せめてもの救いは俺がいなくなって心配する人がいないことくらいかな?

「はは、そうか……俺は帰れないのか」

 力なく項垂れる俺。
 ごめんよパ○ラッシュ、俺もう疲れたよ……

「うーん、困ったな。代わりを呼ぶにも、もう儀式を行う魔力も道具もないし……いや待てよ、もはやなりふり構っている暇もないし」

 ベッコンべコンに凹んでいる俺の横で腕を組みながらなにやらブツブツと考え込んでいた魔道士が、まるで苦渋の決断を下したように顔を上げた。

「仕方ない。そこのお前、今から魔王になってみないか?」
「はい……?」
「だから魔王だよ、魔王。今の魔界には魔王は不在だから簡単になることが出来るぞ」
「え、いや……無理でしょ?」

 気軽に仰ってるけど無理でしょ、それ?

「ええい、こんなチャンス滅多にないんだぞ! 普通ならなろうと思ってもなることなんて叶わない栄誉なことなんだぞ!」
「いやいや、それおかしいって!?」

 だってさっき言いましたよね? 魔王は魔界を統べる存在だって。

「落ち着いて考えてみろ、俺はどこからどうみても普通の人間だぞ? 多分お前が予想しているような特別な力を一切持ち合わせていない、どこにでもいるただの人間だぞ?」
「しかし、もしかしたら召喚そのものは成功しているかもしれないだろ? お前には実は秘められた力が―――」
「いや、ないだろ常識的に考えて」

 魔界を統べる? 俺が?
 いや、無理だから。

「とにかく絶対無理だ、悪いがそんな恐ろしい物なんかになってられない。他を当たってくれ」
「そうか、わかった。残念だがお前は諦めることにする……」
「ああ、すまないな」

 俯く魔道士の声はどこか沈んでしまい、それ以上の追求はなかった。
 悪いことした気分になって心が少し痛んだが、仕方がない。出来ないものは出来ないし、無理に引き受けて下手な希望を持たせるような無責任な真似はしたくない。
 一見冷たい考えだと思われがちだが、自分に見合った決断を下すことは決して間違いではない。
 そう、それが俺の学んだ正しい生き方ってヤツだ。

「とにかく、俺も勝手にやっていくからお前も……その、なんだ。頑張れよ」
「待て、それはどういう事だ? お前は一体何を言っている?」

 立ち去ろうとする俺を魔道士が引き止める。

「いや、だってお前にもやることがあるんだろ? だったらそれを優先したらいいさ」
「お前は自分が何を言っているのか理解しているのか? そんな事をしたらお前はどうするんだ?」
「俺か? 俺は元々一人で生きてきてたんだ、こっちでもなんとかやってみるさ」
「そんなうまくいくか、魔界を侮っていると死ぬぞ!」
「その時はそれまでだったってことで」

 実は先程まで突然すぎて混乱していたが、落ち着いてから良く考えてみれば、ちょっと魔界とやらに期待を隠せない俺がいた。
 だって魔界だぞ? 噂の異世界だぞ?
 もうあんなクソ退屈な毎日じゃないんだぞ? ずっと家と学園とバイト先を往復するだけのつまらない日常から解放されたんだぞ?
 それは誰も体験することの出来ないイレギュラーな体験。帰ることができないというなら、せめてこの新しい世界を楽しめないと損だ。

「まあ一人で何とかやってみるさ」

 不安半分期待半分を胸に抱き、俺は一人で出口に向かう。

「ならば、せめてここを出るまでは」
「大丈夫だ、問題ない」

 俺は顔だけ振り向いて、クールな笑みを浮かべてビシッと親指を立てた。
 ふ、決まった。そう、真の漢はこうやって背中で語るものさ。

「ま、そんなワケだ。縁があったらまたどこか出会おう」

 魔道士に手を振りながら、俺はこの部屋の出入口と思われる扉の外へと静かに歩き出した。
 ま、ここまで来たらなるようになれだ。

「あーあ、行ってしまったか……まあ、どうせすぐに合流できるだろう」
別窓 | 作品 | コメント:0
<<ぶるくす抱き枕カバーこんぷりーと! | 御影のゲーム日記 | 帰省準備>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

| 御影のゲーム日記 |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。